アイドルマスターの歴史とは、(良くも悪くも)裏切りの歴史である。
↑の増田をみて、ふと思うところがあったのでつづる。 なんか書いてたらほとんど765ASの話しかしてないけど許してね。
前口上と結論
アイドルマスターシリーズは、かれこれ10年以上続く立派なコンテンツとなった。
電車に乗れば、高い確率でアイマスのスマホゲームをプレイする人を見かける。
街中の大きな看板に、でかでかと映し出されたアイドルの姿がある。
【デレステ広告】アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ 新宿メトロプロナード 全アイドル集合看板
誰もが知っている大きな会場でライブが開かれ、夢中になってサイリウムを振ることができる。
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その姿は、もうどこに出しても恥ずかしくない立派なアイドルである。
もう、「なにそれ?なにが面白いの??」と聞かれなくていいのだ。
人から認めてもらう必要はない。 そう思いながらも、どこか後ろ髪を引かれる感覚を、覚えなくてもいいのだ。
しかし、コンテンツが長く続くということは、多くの光と共に、影があるということでもある。 アイドルマスターの歴史とは、それすなわち「裏切りの歴史」でもあるのだ。
「裏切り」とは、負の側面が強く表れる言葉である。 しかし、この「裏切り」こそ、アイドルマスターがここまで大きなコンテンツとなった秘訣なのかもしれない。
ファンへの裏切りと、コンテンツの繁栄
アイドルマスターシリーズは、様々なきっかけを持って、大きな変化を与える。
星井美希、彼女の場合
Xbox360版が発売された時には、新たなキャラクターとして「星井美希」が発表された。 そこで、それまでのアイドル候補生とは大きく異なる要素が、星井美希というキャラクターに「のせられた」のである。
彼女のプロデュースを進めると、あるイベントを境にアイドルとしての自覚を強く持ち始める1。
こちらはDランクアップ+会話。このイベントを境に、アイドルとしてのストイックさを見せていく。
こちらはCランク+夜の会話。これまでの経験から、自身へのアイドルとしての自覚を持ち、「変わる」ことを決意する。
その後、選択肢によって、美希のビジュアルが茶髪ショートへと変化する。(この姿は覚醒美希と呼ばれることが多いが、「変わる」こと自体が覚醒であるため、正確には誤りである。)
それまでにはなかった要素である「ビジュアルの分岐」が、彼女には含まれている2。 この手のゲームにとって、登場人物のビジュアルが与える印象は大きい。 それを変えてしまうということは、下手をすればキャラクターを嫌いにさせてしまうことにもつながりかねない。
そんな可能性に怖気づかずに挑戦する姿こそが、彼女に「のせられた」裏切りであった。
プロジェクトフェアリー、彼女らの場合
アイドルマスターはPSPでも活躍をみせ、「アイドルマスターSP」が発表された。
ここでは、ある意味文字通りの明確な「裏切り」がキャラクターにのせられた。
前項で述べた星井美希が、登場人物に立ちはだかるライバルキャラクターとして登場したのである。新登場となる我那覇響、四条貴音を引き連れた「プロジェクトフェアリー」として。
それまで、ゲーム上では他プレイヤーや姿を持たないCPUがライバルとして登場することはあっても、明確な姿・形を持ったライバルが登場することはなかった。そこに、明確なストーリーラインとライバルキャラクターが突如現れたのである。
彼女たちは時に厳しく、時に優しく、プロデュースするアイドル達の前に現れる。アイドル候補生達も、ライバルを意識することで、それまでのゲームとは違った一面を見せるようになった。ストーリー形式になることで、より没入感のあるゲーム体験を実現したのである3。
しかしながら、星井美希がライバルとなり、プロデュースが不可になったことには、賛否が生まれた。Xbox360の世界観を好きになればなるほど、その違和感は際立つ。「自分の好きな世界で生きていく」とSPを否定して、アイドルマスターシリーズの「その後」から去っていく人物もいた。
ライバルとして立ちはだかること、そして、これまでから裏切ること、この2点がプロジェクトフェアリーに「のせられた」裏切りであった。
秋月涼の場合
アイドルマスターSPの発表からしばらくして、初の任天堂ハード展開である「アイドルマスターDS」が発表された。
このゲームはいわゆる「外伝」とでもいうような作品で、根本的なシステムから毛色が異なる。作品形式自体がアドベンチャーであり、アイドルをプロデュースするのではなく、「主人公のアイドルになり、ストーリーを追体験する」のである。その中で何を「裏切り」とするかは難しいが、特筆すべきものはある。
特に、主人公の一人である「秋月涼」は外部的な反響が大きかった。
この秋月涼だが、当初女性だと思われていたところに、公開されたプロフィールなどを参考にして「男性4なのではないか?」との声が上がった。そして、性別に疑惑が広がる中、公式からとある発表があった。
発売前の番線番組。動画の開始後すぐに男性であることが発覚する。身も蓋もない。
涼が男性であることは、大きな反響を呼んだ5。明確な男性アイドルがゲーム上に登場するのは初めてのことである。また、「女装をしてアイドル」という点も物珍しかった。
「性別を越境すること」、それこそが、秋月涼に「のせられた」裏切りだと私は思っている。
アイドルマスター2の場合
数々の外伝的作品を経て、アイドルマスターはとうとう正統な続編の立ち位置となる「アイドルマスター2」を発表した。 Xbox360の発表からもおおよそ4年を経て発売された今作は、お世辞にも「優等生であった」とは言えない。ここで提供された裏切りは、それまでよりも幾分か悪い影響が大きいものである。
東京ゲームショウ2010で行われたイベントで、様々な情報が発表された。新CDシリーズの発売、「Jupiter」というライバルキャラクター、そして水瀬伊織・双海亜美・三浦あずさ(+秋月律子のプロデュース)による「竜宮小町」という新ユニットの登場である。
この中で最も影響が大きかったのは竜宮小町メンバーがプロデュース不可となったことである。単純な人数換算でも、前述のSPの4倍は影響がある。アイドルと密にコミュニケーションをとるゲームの性質上、プレイアブルの可否は大きな反響が出てしまう。
竜宮小町発表となったPV(後半のほう)。プレイヤーが自ら選んでユニットとすることはあったが、制作側から指定のユニットが登場することは初めてであった。
Jupiterが初登場となったPV。秋月涼という前例もあるが、男性が「男性アイドル」として登場するのはゲーム上初めてのことである。
竜宮小町の登場によるネガティブイメージが災いしてか、その他多くの新要素が「裏切り」として、悪い形で出てしまうこととなった6。
今後も続く「裏切り」
正直疲れたので、その後のアイドルマスターシリーズの現在に至るまでの歴史はまたの機会につづることにする。
星井美希も、プロジェクトフェアリーも、秋月涼も、竜宮小町も、Jupiterも、皆から許され現在のような人気が出ているわけではない。それらは、様々な媒体で再び日の目をみている。しかしそれは、「裏切り」を受け入れたものが残り、その後のコンテンツが展開され、ファン人数が増えただけである。
その後も、アイドルマスターシリーズは多かれ少なかれ「裏切り」を行っている。単純なアップデートではなく、常に新しい「何か」を求め続けているのだ。
そして、それがいい裏切りとなるか、悪い裏切りとなるかは、結局のところファン個人にゆだねられている。気に入らなかったらその場から去り、そうでなければ受け入れる他ない。
そんな裏切りを受けながら、我々は今日もアイドルマスターと接するのである。
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この「ランクアップ」は、成長を促される・アイドルの姿に疑問を持つなど、各アイドルのシナリオで様々な分岐点となる。ぜひみてね!!!↩
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また、携帯ゲーム機という選びやすい媒体・プロデュース形式(既存のモード・ストーリーモード)の選択が可能であることなどから、アイドルマスター入門機としての役割も果たした。↩
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業界的にいえば男の娘である。↩
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「涼ちん」などと呼ばれたりもした。↩
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あまり公平な記事とはいえないが、ニコニコ大百科の9・18事件の記事https://dic.nicovideo.jp/a/9%E3%83%BB18%E4%BA%8B%E4%BB%B6をみると、当時の様子がうかがい知れるだろう。↩