ケガや病気によって休職→退職してから就職するまでに使える支援制度・もらえる給付金
長い人生、いつケガや病気によって働けなくなるかわからない
私の身の回りでも、ケガによる入院や精神疾患によって退職した人を何人か見てきた
「備えあれば憂いなし」ということで、そういった状況で利用できる支援制度や給付金について調べた*1
この記事の対象
- ケガや病気によって休職したのち、退職した人
- 療養後、就職を目指している人
なるべく汎用的に書いていますが、どちらかといえば病気(主に精神疾患)が原因となるケースを想定しています
結論
大前提として、
まずはゆっくり休んで、先々のことは元気が出てから考えよう
少しでも悩んだら、病院のかかりつけ医や自治体の窓口に相談しよう
そして、先々のことを考えられるようになったら、
やっておきたいことリストをベースに、以下の方針で対応すると良いと思う
- (条件を満たすならば)傷病手当金は絶対に申請する
- 長期間まとまった収入が確保されるのは(お財布にも心にも)ありがたい
- 経済的に厳しい要因(国民年金の保険料・奨学金の返還)について、免除や軽減措置を申請する
- 住民税は免除・軽減といった措置を取らないことが多いため、払えない場合は早めに担当の窓口に相談する
- 就職活動(雇用保険(失業保険)が出ている間)
- 就職活動(雇用保険を貰い切った後)
- 求職者支援を利用する
- アルバイトと併用して(給付金と合わせると最大で月18万の収入)、生活しながら就職先を探す
- 求職者支援を利用する
これだけはやっておきたいことリスト
以下、詳細な説明など
- この記事の対象
- 結論
- 在職中(休職中)にできること
- 通院開始時にできること
- 条件次第でできるもの
- 退職後にできること
- 離職票が到着してからできること
- 求職活動を始めるとき(傷病手当金の受給を終了するとき)
- 求職活動中に受けられる支援・割引・給付金
- 就職後にもらえるお金
- 就職が決まった後にやること
- 注意したい点
- 雑記
- 補足
在職中(休職中)にできること
傷病手当金の申請を行う(加入中の健康保険組合)
病気やケガで会社を長期間休む場合に申請できる
加入している健康保険組合から、賃金の約3分の2が給付される
支給が開始されると、最大1年6ヶ月先まで手当を受け取ることができる
傷病手当金の受給は、退職後も可能である
ただし、退職後は受給の条件が変化する
- 1年以上の被保険者期間がある
- 退職時に受給資格を有している、または受給の条件を満たしている
- 在職中に受け取っている場合は、そのままで問題ない
- 退職時に片付け等で出勤してしまうと受給資格を失ってしまうため、注意が必要である
以下の流れで申請を行う
通院開始時にできること
(任意)自立支援医療制度の申請を行う(保健所)
医療費(通院・診察・処方・手術など)の出費が軽減される
所得や症状にもよるが、精神疾患の場合は通院に関する費用が3割負担から1 割負担になるケースが多い印象
申請には医師の診断書が必要なため、あらかじめ主治医に相談すると話が早い
条件次第でできるもの
主に傷病の程度が重い場合に申請できるもの
(任意)障害者手帳の申請を行う(各自治体)
条件を満たすことで障害者手帳を申請できる
障害者手帳とは身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の総称であり、それぞれ別の制度である
障害年金とは別の制度で、どちらも申請可能である(当然ながら等級の基準も異なる)
障害者手帳を取得した場合、税金の控除や公共交通機関の割引などが受けられる
就職に関しては、雇用保険の受給日数が伸びる(最大360日)・障害者雇用の求人に応募できるといったメリットがある
なお、精神疾患(精神障害者保健福祉手帳)の場合、申請には初診日から6ヶ月経過している必要がある
(任意)障害年金の申請を行う(各自治体の年金窓口や年金事務所)
条件を満たすことで障害年金を申請できる
障害者手帳とは別の制度で、どちらも申請可能である(当然ながら等級の基準も異なる)
傷病手当金と併用することはできない
(傷病手当金の受給金額が高い場合のみ、傷病手当金から差額が支給される)
なお、原則として初診日から1年6ヶ月経過した後の期間が請求対象となる(身体の症状や先天性疾患など、例外となるケースもある)
傷病手当金の受給期間も最大1年6ヶ月であるため、傷病手当金を満期まで受け取ったあとに切り替える運用が一般的だと思われる
日本年金機構HP内「障害年金」 : https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html
退職後にできること
(任意)生活福祉資金貸付制度の申請を行う(自立相談支援機関)
各都道府県の自立相談支援機関から貸付(=借金)を受けることができる
返済の義務があるため、リスクを考えて申請するか選ぶべきだと思う
主に緊急小口資金と総合支援資金の2種類が存在する
居住地域の自立相談支援機関に相談して、案内を受けながら申請すると良い
以下の2パターンから選択する
- 緊急小口資金の申請を行う(自立相談支援機)
- 緊急かつ一時的に支援が必要な場合
- 総合支援資金の申請を行う(自立相談支援機)
- 生活再建までの間(長期間)に支援が必要な場合
離職票が到着してからできること
退職後、2週間〜1ヶ月ほどすると離職票が送られてくる
2週間経っても送られてこない場合、会社→ハローワークの順に問い合わせると良い
また、離職票がなくても雇用保険の手続きはできる(仮手続き)ため、傷病手当金の受給を終了するか検討している場合は先に手続きをしても良い
雇用保険(失業保険)の受給期間延長手続きを行う(ハローワーク)
傷病手当金と雇用保険は併用することができない
雇用保険の受給期間を伸ばすことで、求職の際に傷病手当金から雇用保険に切り替えることができるようになる
退職日の翌日から30日経過した日の翌日以降(つまり退職日から31日後?)に申請が可能となる
厚生労働省HP内「Q&A ~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 : https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
Q12 前の会社を、病気やけが、妊娠、出産、育児などの理由で退職しましたが、このような理由により退職したため、すぐに働くことができません。どうしたらよいでしょうか。
(中略)
雇用保険(基本手当)を受けることができる期間は、離職日の翌日から1年間に限られており、これを受給期間といいますが、離職日の翌日から1年以内に30日以上継続して職業に就くことができない場合は、受給期間の延長申請を行うことで、本来の受給期間1年に働けない日数を加えることができ、職業に就くことができる状態になった後に、受給手続ができます。
上記 Q&A から引用
- 働けない旨が記載された書類(診断書など)を用意する(病院)
- 筆者の地域では、傷病手当金の申請書のコピーでも可能であった
- 受給期間延長申請書を提出する(ハローワーク)
- 受給期間の延長・延長に停止に関する説明を聞く(ハローワーク)
健康保険の加入・変更手続き(各自治体)
選択肢が多くてわかりづらい部分
保険料を計算して、一番安くなる選択をするといいと思う
(筆者の場合は国民健康保険であった)
以下の3パターンから選択する
加入済みの健康保険で任意継続を行う(加入していた健康保険に引き続き加入する)
-
- 同時に保険料の軽減措置を申請したいところだが、この時点では必要な書類が足りない
- 詳細は国民健康保険の保険料軽減措置には条件があるを参照
- 同時に保険料の軽減措置を申請したいところだが、この時点では必要な書類が足りない
被扶養者として健康保険に加入する
国民年金の加入手続き(各自治体)
会社で加入していた年金(厚生年金など)から、国民年金へ切り替える必要がある
日本年金機構HP内、「会社を退職した時の国民年金の手続き」 : https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-03.html
(任意)国民年金の保険料の免除申請を行う
国民年金の保険料を納めることが難しい場合は、免除申請を行うことができる
申請期間中は保険料の支払額が減額(半分支払ったとして計算)されるため、将来受け取る老齢年金が減額される
(10年以内であれば、追納して満額にすることも可能)
リスクを考えて申請するか決めると良いと思う
以下の2パターンから選択する
- (任意)失業による特例免除の申請を行う
- 日本年金機構HP内、「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 : https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
- (任意・障害年金を受給中の場合)法定免除の申請を行う
- 日本年金機構HP内、「国民年金保険料の法定免除制度」 : https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20140710.html
(任意)奨学金の返還を待ってもらう(奨学金制度を実施する団体)
奨学金を借りている場合、利用する機関によっては、傷病(病気)や失業といった理由によって返還を減額する・猶予を儲けるなどの措置を申請することができる
たとえば、日本学生支援機構が実施する奨学金では、傷病および経済困難といった事由で申請ができる
www.jasso.go.jp www.jasso.go.jp
求職活動を始めるとき(傷病手当金の受給を終了するとき)
傷病手当金の申請を終了する
傷病手当金の申請を行わない(申請書を送らない)だけでOKだと思う
求職登録を行う(ハローワーク)
ハローワークで求職登録をすると、就職に関する支援が受けられるようになる
後述の雇用保険(失業保険)の受給手続きを行う(ハローワーク)と同時に行うことになると思う
筆者の場合は、「求職登録→雇用保険の申請(受給期間延長の停止)」の流れであった
なお、オンラインでの登録(≒仮登録)も可能なので、事前に行っておくとスムーズかも
もし障害者手帳を所持している場合は、その旨を伝えて就職困難者として申請を行う
障害者向けの相談窓口が利用できる・障害者用の求人に申し込めるなどのメリットがある
雇用保険(失業保険)の受給手続きを行う(ハローワーク)
雇用保険の受給資格を取得すると、さまざまな支援を受けられるようになる
前述の求職登録を行う(ハローワーク)と同時に行うことになると思う
手続きの前に、「離職票-2」の右側にある離職理由欄と離職者本人の判断の項目を確認しておくと良い
休職期間の満了による退職の場合、退職者は特定理由退職者として扱われる
この種別は、自己都合退職者に生じる雇用保険の給付制限期間(通常2〜3ヶ月)がなくなる・国民健康保険の保険料が軽減されるといったメリットがある
- 離職理由欄には「その他」が選択されていて、理由欄に休職期間満了の旨が記入されていなければならない
- 就業規則であらかじめ定められている場合を除く
- 離職者本人の判断の項目は、何も記入されていないことを確認する
- 離職理由が認識と異なる場合に「異議有り」として記入することになる
もし障害者手帳を所持している場合は、その旨を伝えて就職困難者として申請を行う
受給期間が延長される(最大360日)メリットがある
以下の流れで申請を行う
- 受給期間の延長理由がなくなったことを確認できる書類(診断書など)を用意する(病院)
- 「離職票-2」の離職理由欄と離職者本人の判断の項目を確認する
- 受給期間の延長を停止する(ハローワーク)
- 雇用保険の受給手続きを行う(ハローワーク)
- もし障害者手帳を所持している場合は、その旨を伝えて就職困難者として申請を行う
国民健康保険の保険料の減額措置を申請する(各自治体)
雇用保険の受給資格を取得すると、雇用保険受給資格者証が発行される
国民健康保険に加入している場合、これを使って保険料の軽減措置を申請できる
(詳細は国民健康保険の保険料軽減措置には条件があるを参照)
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004o7v-img/2r98520000004o9d.pdf
※ 国民健康保険の運用は自治体によって異なるため、詳細は各自治体の HP を参照
求職活動中に受けられる支援・割引・給付金
ハローワークが多くの支援を実施している
窓口で相談すれば紹介してもらえると思うので、覚える必要はないと思う
公的職業訓練を受ける場合
公的職業訓練とは、以下の区分の総称である
訓練費用は無料(一部テキスト代などは自己負担)で実施される
公共職業訓練(ハローワーク)
雇用保険を受給しながら職業訓練が受けられる
また、訓練中に雇用保険の受給が終わってしまう場合、受給日数を延長できるケースも存在する
www.mhlw.go.jp www.hellowork.mhlw.go.jp
求職者支援訓練(ハローワーク)
収入などの条件を満たせば、職業訓練を受けながら以下の支援も受けられる
- ハローワークによる就職活動のサポート
- 月10万円の給付金
ただし、前述のように雇用保険との併用は不可である
雇用保険の期間満了後に引き続き求職活動を行う場合などに使えるか?
教育訓練(≠ 公的職業訓練)を受ける場合
厚生労働省が指定した教育課程を教育訓練と呼ぶ
公的職業訓練とは違い、受講費用の負担が発生する
短期訓練受講費
雇用保険の受給資格者が1ヶ月未満の教育訓練を利用した場合に、受講費用の2割が支給される
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000195646.pdf
教育訓練給付金
指定の教育訓練を利用した場合に、受講費用の2割〜7割(訓練の種類や専門性による)が給付される
大学院の修士・博士課程のカリキュラムなどもあり、幅広い訓練が受けられる
どちらかといえば、働きながらスキルアップをする人向けの施策か
就職活動の土台を支える制度
広域求職活動費(ハローワーク)
ハローワークの紹介により、広範囲の地域にわたる求職活動を行う場合に支給される
主に交通費・旅泊料など
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000190022.pdf
求職活動関係役務利用費(ハローワーク)
就職活動のために保育などのサービスを利用した場合に、利用料の8割を支給する
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000156202_1.pdf
住居確保給付金(自立相談支援機関)
各都道府県の自立相談支援機関が大家に家賃を支払ってくれる
支給期間は原則3ヶ月であるため、その期間内に生活を再建させることが求められる
以下の点に注意する
- 支援を受けるには求職活動が必須である
- 職業訓練受講給付金とは併用できない
就職後にもらえるお金
再就職手当(ハローワーク)
雇用保険の受給日数を3分の1以上残して職業に就くと支給される
残った保険料の6割〜7 割(残日数によって変動)を受け取ることができる
就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けて、6ヶ月雇用が続いた人を対象としている
再就職後の賃金が、離職前より低い場合に、その差額分が支給される
www.hellowork.mhlw.go.jp PDF : https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/syuugyousokushin.pdf
就業手当
雇用保険の受給日数を3分の1以上かつ45日以上残して、雇用期間が1年以内の短期的な職業に就くと支給される
再就職手当の対象とならない業務委託や契約社員向けか
常用就職支度手当
就職困難者がハローワークを利用して仕事に就くと支給される
高年齢雇用継続給付
主に定年後の再雇用において、賃金の低下が発生した際の補正に利用される
60歳以降に賃金が75%未満に低下した場合、その差額が支給される
厚生労働省HP内、「雇用継続給付について」 : https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135090.html
PDF : https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000655512.pdf
www.mhlw.go.jp
移転費(ハローワーク)
ハローワークで紹介された職業に就くため、住居を移転する必要がある場合に支給される
交通費・移転料・着後手当など
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000190022.pdf
就職が決まった後にやること
ハローワークに連絡する
就職が決まったら、ハローワークに連絡してその後の流れを聞く
おそらく以下の流れを案内されると思う
国民健康保険を脱退する
脱退方法は自治体によるが、自治体の窓口か郵送で手続きをする地域が多い印象
新しい健康保険に加入後、14日以内に脱退するのが望ましい様子
注意したい点
国民健康保険の保険料軽減措置には条件がある
制度が複雑であり、対象に期限が設定されているため、注意が必要となる
国民健康保険の保険料の軽減措置を申請する場合、以下の条件を満たす必要がある
- 雇用保険受給資格者証が発行されている
- 特定受給資格者または特定理由離職者であること
傷病手当金を受給している最中は雇用保険を受給できない(=雇用保険受給資格者証が発行できない)ため、保険料を満額払わなければならない
また、軽減措置の施行対象には期限がある(翌年度末まで)ため、期限を過ぎると軽減措置を申請することができなくなる
www.mhlw.go.jp PDF : https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004o7v-img/2r98520000004o9d.pdf
自治体独自の軽減措置もあるため、自治体の窓口で相談するといい方法を提案してもらえるかも…?
たとえば、兵庫県姫路市は申立書を利用して失業免除という形式で保険料免除の申請を行うことができる
住民税の納付は必要なままである
大きな額のお金が必要になるため、注意が必要となる
会社の退職時の処理によるが、以下のどちらかになると思う
- 一括徴収
- 当年分を一気に支払う
- 普通徴収へ切り替える
- 住居宛に納付書が届くので、それを使って支払う
住民税は前年の収入から算出されるため、給与による収入がなくなっても徴収される
期日までに支払えない場合には、自治体の窓口で相談すると、分納など支払いやすい方法を提案してもらえることもある
雑記
- 支援制度は充実している(多すぎて全貌が分からない…)ので、少しでも悩んだら担当に相談して利用できる制度を教えてもらうと良いかも
- 支援を受けることによるデメリットにも注目したい
補足
- 本記事は2022年3月25日に調査・執筆しています。最新の情報に関しては、各自治体・各保険組合のホームページ等をご確認ください
- もし誤った情報がございましたら、コメントまたは Twitter(@ramiyon_chan)宛にお知らせください
*1:当然、一番いい「備え」とは貯金をすることだが…